BRACK☆JACK~序章~
「“Chance in a Million”偶然よ。エイジが偶然あたしの前に現れて、偶然追われてて。そして偶然、あたしがエイジを助けたいと思った…。ただ、それだけの事よ」
「違うな…」
エイジは、必死に言葉を紡ぎだす。
あの組織に属しておきながら、ミサトがとった行動はあまりにも初歩的なミスばかりだ。
どう考えても、わざととしか思えない。
そこから導き出される答えは。
「死ぬ気…なんだろ…? だから、危険を犯してまで…」
ミサトは、ふっと自嘲的に笑顔を浮かべる。
「それも…偶然、よ。ごめんね、お酒に薬、混ぜたりして 」
その言葉を聞いた後、エイジはソファに倒れた。
「あたしとエイジが同じ香りのする人間なら、死ぬのはエイジじゃなくて、あたし。だってもう…」
疲れたの、という言葉を飲み込んで、ミサトはエイジに毛布をかけてやる。
そして着替えを済ませると重いボストンバッグを手に取り、ミサトは部屋を出て行った。