今夜 君をさらいにいく【完】
少し不機嫌な様子で手招きされる。
不機嫌でも何でもいい。彼に呼ばれるのなら。
「見すぎだ」
「え!?」
「今日何度もしつこい位俺を見ていただろう」
「気付いていたなら一度くらい目を合わせてくれても・・・っ」
「ばかかっ!!」
大きめの声で怒鳴られ、シュンとしてしまう。
藤本さんがこちらを見てニヤリと笑っていた。
黒崎さんは私と一緒にいてときめいたり、見つめたくなったりしないのだろうか。
「隣に来いっ」と、いつもの会議室に連れて行かれる。
「あのなぁ、お前は仕事とプライベートの区別ができないのか!?」
黒崎さんはため息をつき、腕を組んで壁にもたれかかった。
「できます・・・でも一緒に働いてるんだからせめて目配せとかしてくれても・・・」
「・・・そんな阿呆らしい事はできない。お前が恋人にそういう事を求めてるのなら、俺は付き合えない」
真剣な目で私を見つめる。ハッキリと突き放された。
目頭が熱くなってくる。
「・・・仕事の時は集中しろ。お前は失敗は多いが、根性があって、一生懸命な所がいいんだから・・・・・・な?」
そう言って、私の頭をポンと撫でた。