今夜 君をさらいにいく【完】
昼休みになり、いつものように玲人を誘った。
私達は食堂の窓際に座り、注文したチキンのクラブハウスサンドを口に運んだ。
向かい側に座った玲人は魚介類のパスタを食べている。
昨日の事は何一つ触れない。
「ねぇ。今度観たい映画があるのよ、モーガン監督の新作ミステリーよ、玲人好きでしょ?」
「ああ、そうなのか」
玲人はスープを飲みながら私に目を向けた。
ほらね。お昼だってこうして一緒に食べてくれるし、映画も一緒に行ってくれる。好みも合うし、やっぱり私といた方が楽しいってきっと思うはず。
「ええ。それじゃあ、いつにしましょうか」
サンドウィッチを一旦皿に置き、携帯を開いた。
「・・・恵里香」
落ち着いた低い声で私を呼ぶ。玲人を見ると私を真剣に見つめていた。
「なに・・・どうしたのよ、都合悪いの?」
「・・・もう一緒に出かけたりはできない」
「・・・え?」
「お前も知ってるだろ。俺が・・・あいつと付き合っている事」
心臓がドクドクと音を立てている。
「し、知ってるわ。でも・・・今までだって他の子と付きあってても私と出掛けてくれてたじゃない」
「ああ・・・でも、もうそういうのはよそう」
「どういうことなの・・・?」