今夜 君をさらいにいく【完】
桜井さんも私に気づき、目を見開いて驚いていた。
きっと私もその時同じような顔をしていただろう。
「・・・マリナ、話があるんだけど・・・ここに座ってくれないか?サナちゃんも・・・」
・・・サナ・・・?
アユムは神妙な面持ちでマリナと、その隣にいるサナという女性に言った。
どう見てもサナという女性は桜井安奈だった。一体どういうことなのか。
桜井さんはマリナと一緒にアユムの隣に座った。二人とも状況が把握できていない様子だった。
「・・・で、話って?」
マリナが私とアユムを交互に見て静かにそう言った時、我に返った。
これからアユムはこの子に別れを告げようとしてる。私を好きになったというのだろう。そんな事をこの場で言われたら桜井さんの耳にも入ってしまう。
私はアユムが言葉を発する前に、アユムの腕を掴んで立ち上がった。
「私!急用思い出したわ!悪いけど帰らせてもらうから送ってちょうだい!」
三人は一斉に私を見た。
不自然すぎるのはわかっていた。でも一刻も早くこの場から立ち去りたい。
半ば強引にアユムを外に連れ出した。
店の外に出て、私はアユムの手を離した。
「どうしたの急に・・・!?」