今夜 君をさらいにいく【完】
私はアユムの顔を見上げた。
「・・・知り合いだったの」
「え・・・マリナが!?」
「ううん、もう一人の子」
「もう一人の子って・・・サナちゃん?」
「サナって本名?」
「いや・・・源氏名だと思う」
「源氏名って夜の仕事の時名乗る名前よね?あの子夜のお店で働いてるの?」
「うん・・・彼女と同じ店で。てか、知り合いだったのに大丈夫だった?」
大丈夫なわけがない。ホストなんかと関係があることを桜井さんに知られてしまったのだから。
・・・というか、玲人は桜井さんが水商売をしていることを知っているのだろうか。
玲人はキャバクラとか苦手なのに・・・
「アユム君・・・悪いけど別れたいってこと、彼女にまだ言わないでくれる・・・?あのサナって子にばれるとちょっとややこしいのよ・・・」
「うんわかってる。・・・まさか知り合いだとはねー」
アユムは大きく伸びをした。彼自身も緊張から解き放たれて気持ちが楽になったのだろう。
「ところで・・・そのサナって子はどこで働いてるの?彼女と一緒のお店で働いているのよね?」