今夜 君をさらいにいく【完】
私の問いに、アユムは一瞬眉をひそめた。
「・・・気になるの?」
「ええ、まぁ・・・」
「俺の口からはちょっと言いづらい。マリナはともかく、サナちゃんは恵理香ちゃんのプライベートな知人だろ?」
「まぁ・・・そうね。でも大丈夫よ、私の中でだけ秘めておくから・・・」
アユムは私の顔をしばらく見つめた後、近くのお店の出入り口に設置されてあったフリーペーパーラックから雑誌を一冊取り出して、パラパラめくりだした。
それは歌舞伎町の飲み屋や風俗店なんかが載っているフリーペーパーだった。
「絶対・・・サナちゃんの知り合いの人とかに言わないでね?」
何度も私に忠告するアユムに少し苛立った。
隣に寄り添い、一緒に雑誌を覗き込む。
色とりどりのドレスを着て、飛び切りの笑顔で映っているキャバ嬢。そのページを過ぎて風俗系のページへと変わった。
「・・・載ってなかったの?」
「・・・いや・・・」
私に苦笑いを見せるアユム。
そして、アユムの手が止まった。