今夜 君をさらいにいく【完】
しばらくして玲人は私に切り抜きを返すと、パソコンに向き直った。
「それじゃあ顔がわからない。桜井じゃないかもしれないだろ」
「玲人!私は桜井さんの知人に聞いてるのよ!間違いなわけないじゃない!」
「俺は!・・・俺は本人から聞いたことしか信じない」
玲人は私ではなく、あの子を信じている。十年以上もそばにいた私よりもあの子の味方をしている。
私はこんなにも玲人を好きなのに届かない。
それなら・・・もうどう思われてもいい。
「あの子の言葉は信じても私の事は信じてくれないのね・・・わかったわ。この事社内に広めるから」
玲人は私を睨みつけた。
「お前っ・・・!」
「じゃあ私に着いてきて。嘘か本当かこの目で確かめるのよ」
「・・・・・・」
「真実を知るのが怖いわけ?恋人の事をもっと知りたくないの?」
玲人は俯き、少しためらった表情をした後、私を見上げた。
「・・・わかった」
そう一言言い、パソコンの電源を切った。