今夜 君をさらいにいく【完】
「そっか、ならいいんだけど。俺も今日は早く仕事が終わってね、サナちゃんに会いたくなってさ」
飯田さんは話しながら入口の重いドアをゆっくりと開け、私を先に外へ出してくれた。
「ありがとうございます。誘っていただけて嬉しかったですっ」
「あ、今日はまだ夕めしの予約までちょっと時間があるんだ。サナちゃんに付き合ってほしいとこがあるんだけど・・・いい?」
照れくさそうに頭を掻く飯田さん。
「どこですか??」
「うん、こっち」
私の肩を抱き、その場所までエスコートしてくれた。
着いた場所は都内でも有名なイルミネーションスポットだった。
12月に入り、街はすっかりクリスマスムードが漂っている。この場所も若いカップルや多くの家族連れで賑わっていた。
仕事が忙しく、しばらくイルミネーションなんて見に行ってない。
「綺麗ー!!付き合ってほしい場所ってここですか!?」
「うん、サナちゃんと一度こういう所に来てみたかった。恋人らしいことしたかったんだよ。俺のわがままに付き合ってくれてありがとう」
そう言って飯田さんが笑った瞬間、周りの光が一気に消えた。
人々がざわつきだす。