今夜 君をさらいにいく【完】


「スターライトウィンクか、ちょうどいい時に来たな」


スターライトウィンクとは、一時間に一回だけイルミネーションが一瞬だけ消灯し、再点灯することだ。


「この消えてる間の時間ってなんかわくわくしちゃいますよねっ」


飯田さんに笑顔を向けた瞬間、飯田さんの唇が私の唇に重なり合った。


そしてその間に一斉にイルミネーションが輝きだし、大勢の人々が歓声をあげた。


彼はそっと唇を離し、驚いている私にこう言った。



「急にごめん・・・でもあまりにもサナちゃんが可愛い顏するもんだからつい・・・」



お店以外でキスされたのは初めてだった。店では仕事として割り切れたからできた。でも外では絶対されないようにと気を付けていたのに。


黒崎さん・・・


私は罪悪感に包まれた。



「わ・・・本当にごめんっ・・・俺なにやってんだろ」



困惑した表情を隠しきれない私に、動揺しだす飯田さん。


でもこの場の空気を悪くしたくない。私は無理やり笑顔を作った。



「い、いえ、ちょっとびっくりしちゃっただけですっ」


< 163 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop