今夜 君をさらいにいく【完】
「スターライトウィンクか、ちょうどいい時に来たな」
スターライトウィンクとは、一時間に一回だけイルミネーションが一瞬だけ消灯し、再点灯することだ。
「この消えてる間の時間ってなんかわくわくしちゃいますよねっ」
飯田さんに笑顔を向けた瞬間、飯田さんの唇が私の唇に重なり合った。
そしてその間に一斉にイルミネーションが輝きだし、大勢の人々が歓声をあげた。
彼はそっと唇を離し、驚いている私にこう言った。
「急にごめん・・・でもあまりにもサナちゃんが可愛い顏するもんだからつい・・・」
お店以外でキスされたのは初めてだった。店では仕事として割り切れたからできた。でも外では絶対されないようにと気を付けていたのに。
黒崎さん・・・
私は罪悪感に包まれた。
「わ・・・本当にごめんっ・・・俺なにやってんだろ」
困惑した表情を隠しきれない私に、動揺しだす飯田さん。
でもこの場の空気を悪くしたくない。私は無理やり笑顔を作った。
「い、いえ、ちょっとびっくりしちゃっただけですっ」