今夜 君をさらいにいく【完】

「嘘・・・絶対嘘!!!」



「・・・あなたが責める権利はないわよ?あなただって同じことしてるんじゃない、しかも多くの男と」



目の前が真っ白になった。


黒崎さんと愛し合ったあの柔らかくて大きなベッドで藤本さんを抱いた・・・?


私にしてくれたように優しく抱きしめてキスして・・・


そんなの信じられないよ。




呆然としていると、伊藤さんがお手洗いに入ってきて、二人の不穏な空気に驚いた。


藤本さんがそのまま何も言わず出て行くと、伊藤さんが私に歩み寄ってきた。



「ちょっとどうしたの!?何か言われた!?」


「あ・・・いえ、何もないです」



適当にごまかすことはできる。だが、今はそんな事に頭を使えなかった。



黒崎さんが藤本さんを抱いた・・・



藤本さんの笑い声が頭の中でこだましている。



「もーっ今日はみんなどうしちゃったのかしらっ黒崎さんなんていつもより不機嫌で今日は怒鳴りっぱなしよー私もさっきちょっとミスったら怒られちゃったわぁ。普段なら少しの注意で終わるのに」


そう言ってトイレの中に入ってしまった。



黒崎さんが不機嫌なのはきっと私のせいだ・・・





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