今夜 君をさらいにいく【完】
早く
一刻も早く黒崎さんと話をしたい。
だけど
昨日のことを境に、黒崎さんからのメールは一切来なくなり、電話にも出てくれなくなった。
黒崎さんとは仕事の話以外、なにも話さなくなった。
仕事中に何度も話そうと試みるが、「忙しい」と言われ、目も合わせてくれない。
その状況は一週間経っても変わることはなかった。
昼休み、久々に職場に来た三条君が食堂で私の向かい側に座った。
「桜井さんっここいーですか!?」
「・・・いいっていう前にもう座ってるじゃない」
トレイにはかつ丼が乗っている。
「今日はカレーうどんじゃないの?」
「そうなんですよ!よくぞ聞いてくれました!今日はカレーうどんないみたいで・・・なんか食えないって思えば思うほど食べたくなっちゃうんですよねぇ」
そう言って割り箸を割り、アツアツのかつ丼を頬張っている。
「桜井さん、また何かありました?」
「え、なんで?」
「元気ないですよ、それにちょっと痩せましたよね?てか、やつれたっていうか」
箸を止め、前のめりになり私の顔を見つめてくる。
「そう?嬉しいなっ」
私はおどけて見せた。