今夜 君をさらいにいく【完】


本当はここ最近ずっとご飯が喉を通らない。食べると気持ち悪くなって途中で食べるのをやめてしまう。また胃もきりきりしだして、胃炎も再発したかもしれない。



「俺はレポート地獄でしたよぉ。ホント早く卒業したい」


「本当にそう思ってるの??社会に出たらきっと今より大変だよ」



「でも早くちゃんと働きたいんです。まぁここをやめてしまうのは寂しいですけど。そしたら桜井さんも一人前の男として認めてくれますよねぇ!?」



両端の口角を上げて私の返答を待ちわびている。



“そうだね”と返事をしようとした時、三条君の後方に黒崎さんの姿を見つけてしまった。


藤本さんと一緒にこちらに向かって歩いてくる。それは絵に描いたようにお似合いで、思わず目を背けた。


二人を見るとトイレで藤本さんに言われたことを思い出してしまう。


もう一度黒崎さんの方を見ると、なんと私の方を見ていた。


しかし、すぐに違う方向を向いてしまった。一瞬、目が合ったような気がしたのは気のせいだったのだろうか。


それにしても・・・

このままずっと連絡が来なかったらどうしよう。もしかして自然消滅なんてこともあるのかもしれない。


喉にツンと痛みが走った。


やばい、泣きそうだ・・・






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