今夜 君をさらいにいく【完】
「どうしたんですか急に・・・」
三条君が後ろを振り返り、そしてまた私のほうに向き直った。
「桜井さん、食べ終わったら屋上行きません?」
「屋上?」
「はい、今日は天気もいいですし!」
私は頷き、小さく握ってきたおにぎりを胃に押し込んだ。
うちの会社は屋上庭園があり、沢山の草花が生い茂っていて、その横には可愛らしいガーデンベンチやテーブルがいくつかあり、そこでお昼を食べることもできる。
さすがに12月ともなると、寒いので人もまばらだった。
私たちは端の方の人があまりいない場所を選び、ベンチに座った。
「寒いけど陽が出てると暖かいっすよね」
そう言って大きく伸びをする三条君。
「・・・桜井さんって、黒崎さんとなんかあるんですか?」
「え?」
「俺、口堅い方なんだけどなぁー」
三条君はいつから感づいていたのだろう。誰にもばれないように付き合ってきたつもりだったのに。
「・・・うん、付き合ってる」
「やぁああっぱりぃ!?つかすごいですね!?黒崎さんのハートを射止めるとは!」
「ううん・・・もうだめかもしれないし」