今夜 君をさらいにいく【完】
しばらく沈黙が続いた後、三条君がつぶやいた。
「・・・俺じゃだめですか?」
「三条君・・・」
「俺、、ずっと桜井さんの事見てきました。昼の顔も、夜の顔も・・・俺だったらそんな悲しい顏絶対させません!」
今までにないくらい真剣なまなざしで見つめられた。
「俺、本気です。返事はすぐじゃなくてもいいですから。考えてみてください」
そう言い、一人で中に戻ってしまった三条君。
三条君の気持ちには気づいていた。
飯田さんといい、三条君といいどうしてこんな私に本気になってくれるのか。
何もとりえもない、普通の女なのに・・・
携帯を取り出し、センターに問い合わせてみる。
何度この行為を繰り返したのだろう。
そして私から黒崎さんにメールを送ることもなくなっていた。
そんなことをし続けていてもうざがられるだけだ。
面倒な女だと思われたくない。
私はベンチの上で体育座りをし、うずくまった。
冬の風は痛いくらい冷たく、私の体に容赦なく吹き付けた。