今夜 君をさらいにいく【完】


「元気ないと思ったら・・・まぁいいや、桜井さん今日も弁当ですよね?一緒に食べましょう」



ぐいぐいと私をひっぱり、窓際の席に座らせる。
向かい側に三条君が座った。



「ここのカレーうどん、めっちゃうまいんですよねぇ!桜井さんちょっと食べてみます?」



俯いたまま首を横に振る私に、



「下ばっか向いてたら幸せ逃げますよ~桜井さんは笑ってる顔がカワイイんだけどなぁ。失敗なんて俺の方がはるかに多いですよ!でも全然気にしないっす。次がんばろって感じで、永遠に学習しないんすけどねぇ」


と、笑って言った。


お茶らけて言う彼の言葉に、胸のつっかえがすぅっと消えていくようだ。



「・・・ありがと。そうだね!前向きに考えなくちゃ」



私は自分で作ったお弁当を広げた。昨夜の残りの煮物にウィンナー、卵焼き。さっきまで食欲がなかったのが嘘のように胃の中にすいすい入っていく。



三条君がいてくれて良かった。


すると、三条君が手を伸ばし、お弁当の卵焼きを奪っていった。



「あ!」



「いつもおいしそーだなーって思ってたんですよねー!桜井さんの手作りでしょ!?」




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