今夜 君をさらいにいく【完】
その時、タラの芽の天ぷらと焼き鳥が運ばれてきた。
「お、きたきた。ここのタラの芽の天ぷらが格別にうまいんだ、食べてみろよ」
そう言われて口に運ぶと、優しい塩加減と共にタラの芽のうまみが口いっぱいに広がった。
俺の顔を見て、「な!?うまいだろ?」と、満足そうに微笑む。
俺が女だったら、絶対に飯田先輩を選んでいるだろう。
こんなに穏やかで思いやりがある、綺麗な人間はそうそういない。
それからは飯田先輩の会社の話や、学生時代の頃の思い出話が出たりして話が膨らみ、店を出たのは22時を回っていた。