今夜 君をさらいにいく【完】
その表情は重苦しく、いつもの元気なマリナではない。
「マリナ?具合悪いの?」
私が近寄ると、顔を上げ、
「サナさん・・・」
と、今にも泣きそうな顏で私を見つめる。
しかしその顔は誰!?っていうくらい別人だった。・・・というか、すっぴんだったのだ。
「マリナメイクしてないの!?もうすぐ開店だよ!?」
「・・・」
すると、マリナの小さいつぶらな瞳から次々と涙が溢れ出てきた。
「どうしたの!?」
そう聞いても、泣くばかりで何も答えてくれない。
その時、小野君が待機室のドアを開けた。
「サナちゃん・・・って!マリナちゃん!?」
小野君もマリナの様子に驚いていた。
「あのっサナちゃん、今日お客さんすでに3人待ってるので。急いで3番に行ってください!延長は断ってくださいね」
マリナの事を横目で気にしながらも、受付に戻っていった小野君。
私もマリナが気になるが、お客さんを待たせるわけにはいかない。
「サナちゃん、私がマリナの側にいるから行ってきな」
「あ、ユウキさんありがとうございます!」
近くにいた女の子たちがマリナの側に寄っていく。