今夜 君をさらいにいく【完】
なので来年綾が高校生になったら私は他県に行き、住み込みで月給が高い工場で働こうと考えていた。綾とは離れ離れになるが、今より堂々と暮らしていくことができると思う。
でもそしたら・・・黒崎さんとも離れ離れになるのだけど。
「玲人とはあれから何か話した?」
「・・・いえ、何も」
「そうかー、あいつまだ話してないのか」
「え?」
「いや、俺からは何も言えないけど、もう少しあいつの事信じて待ってみてくれないかな」
なぜ飯田さんがそう言うのかはわからなかったが、私はとりあえず頷いた。
黒崎さんとはあれから何もない。あの日から半月以上も経ってるというのに。もうだめなら、いっそ振ってもらった方がいいのに。
いや、でも振られたら私はすぐに立ち直れるのだろうか。
考えただけでも辛すぎる。
「サナちゃん、本当に今まで楽しい時間をありがとうね」
そう言って、ブランドの紙袋から大きな箱と、小さな箱二つを取り出した。
「・・・え!?」
「今まで買ってあげるって言っても受け取ってくれなかっただろ?だから俺が選んで買ってきてしまったよ。開けてみてくれる?」