今夜 君をさらいにいく【完】
驚きを隠せないまま、大きな箱の紐をほどき、中を開けるとエルメスのバッグが入っていた。
私は震える手で蓋を閉め、次に小さな箱を開けると、フランクミュラーの腕時計と、カルティエのブレスレッドが入っていた。
たぶん総額400万以上だ。
「飯田さん・・・もらえません・・・こんな高すぎるもの・・・!」
他のお客さんからも、ブランド物のプレゼントをもらった事はあったが、高くても3.4万くらいの物だった。何百万だなんて、桁が違いすぎる。
「いや、返されても困るんだよなー俺も」
「そ、そんな・・・」
困り果てていると、私の両手に飯田さんの手が重なった。
「これは今からサナちゃんの物だよ、だから売ってお金にしてもらっても俺はかまわないんだ。というか、そのつもりであげたようなもんだし」
「飯田さん、でも私・・・」
「最後くらい、俺のお願いを聞いてくれてもいーんじゃないのかな?」
そう言って優しく笑う。
「寂しいけど、もうサナちゃんに連絡もしないし、会わない。だから玲人と、後悔しないようにちゃんと話し合うんだよ?じゃないと俺が悲しむからね?」
言葉もでない。