今夜 君をさらいにいく【完】
「私なんかに・・・こんなに良くしていただいて・・・私何もしてあげられてないのにっ」
「私なんかっていうのは禁句だよ。前にも言ったでしょ?サナちゃんは今まで俺に沢山幸せをくれたって。だからね、サナちゃんには絶対幸せになってほしいんだ。それが俺の一番の願いだよ」
こんな素敵な人に愛されてた。
いつも心の支えになってくれていたのは飯田さんだった。明るくて優しくて、会えば温かく迎え入れてくれる。太陽みたいな人だった。
そんな飯田さんにもう甘えることはできない。
「・・・わかりました。飯田さんには感謝してもしきれません・・・本当にありがとうございました」
「堅苦しいなぁ、最後くらいそんなしんみりしないで笑顔でサヨナラしようよ」
笑って私の頭をポンポンと撫でる。
最後のお見送りの時は、涙が止まらなかった。
「ほら、笑顔笑顔!」と、飯田さんが私の頬をプ二プ二してくる。
私は泣きながら笑っていた。きっと、どうしようもないくらいのブスになっていただろうが、涙を止めることは最後までできなかった。
出入り口で飯田さんの姿が見えなくなるまで手を振った。
飯田さん、本当にありがとうございました。と、心の中で何度もつぶやきながら・・・