今夜 君をさらいにいく【完】

イタズラな笑みを浮かべ、口に放りこみ「ウマイっ」と叫んでいる。


「もー!」


無邪気な三条君を見ていると、こっちまで笑顔になれる。

その時、先ほどまで私を苦しめていたあの低い声の主が頭上で声を発した。



「さっきまでこの世の終わりのように落ち込んでたくせに切り替え早いな」



振り返ると、黒崎さんと企画課のリーダー、そして藤本さんがこちらを見ていた。



「あ・・・」


「まぁあれだけワンワン泣かれちゃお客様と話もできないしね~、切り替え早くて良かったわ」



藤本さんが私の顔をかがんで覗きこんでくる。



あの部屋で泣いてたの、藤本さん知ってたんだ・・・
でもこの場で言うなんて・・・ひどい・・・



「泣いた?お前泣いてたのか?あれごときで」



黒崎さんは知らないようだった。


なぜ自分がここでもこんな恥をさらされなきゃいけないのか。


また泣きそう。唇をかんだ。



その時、三条君が私のお弁当と、手を取って立ちあがらせた。



「すみません、俺らちょっと用事あるんで!」



そのまま強引に引っ張られて食道を後にする。






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