今夜 君をさらいにいく【完】
「そんな事してほしいわけじゃない!そんな事されたら・・・私が今までアユムを好きだったって事が全部消えちゃうじゃんっ・・・私はあんたをなかったことになんかしたくないよ」
「マリナ・・・」
「でも・・・そんな事する覚悟があるくらい、その人の事が好きなんだね・・・」
アユムがゆっくりと頷く。それを見てマリナが立ち上がった。
「わかったよもう。恥ずかしいから立ってよ」
「・・・マリナ、俺お前といれて楽しかった。お前と付き合えて良かったって思ったのは本当だ」
「その言葉だけで十分だし!」
と、少し悲しげに微笑んだマリナ。そこにはさっきまで落ち込んでいたマリナの姿はなかった。
「じゃあねっ!」と、いつもの軽いノリでアユムに言い、私の腕を掴んだ。
「行きましょサナさん!」
「え、マリナもういいの!?」
その言葉に、ニッと笑みを見せる。
「マリナっ!」
その声に振り返ると、「今までありがとう」と、アユムには似つかない、綺麗な一礼を見せた。