今夜 君をさらいにいく【完】
誰もいない給湯室の前で手を離された。
「すいません、俺つい・・・」
三条君が申し訳なさそうに誤っている。
「ううん!大丈夫!」
あのままあの場にいたら絶対また泣いてた。
「なんか俺あの人たち好きじゃないんすよね、いくら上司だからって言っていいことと悪い事あるでしょ。特に藤本恵里香!あいつ桜井さんとタメのくせにっ・・・」
「さ、三条君!声落としてッ」
熱くなって大きな声になる三条君を慌てて宥めた。
「でも俺、何があっても桜井さんの味方っすから!なんかあったらすぐ言ってくださいね!?」
ホントイイ子だなぁ三条君。
彼と同時期に会社入れて良かった。女友達のように何でも話せるから。
でも・・・
さっきの黒崎さんの言葉はひどい。
“アレごとき”って。
まぁ黒崎さんはうちの事情何もわかってないからしょうがないんだけど・・・
冷酷人間って呼ばれてるだけあって、本当に冷たい人なのだろうか。
私は自販機でコーヒーを買い、一息ついてから仕事へ向かった。