今夜 君をさらいにいく【完】
秘密
「今日暇っすねぇー・・・」
ファッション雑誌を眺めながらそう呟いたのはマリナだ。
マリナは店の待機室でゴロンと横になりながら雑誌を読んでいる。
彼女は私の一つ年下。金髪の長い髪の毛は、コテでクリクリに巻かれている。びっちり上下に濃く引いたアイライナーからは黒々とそびえ立つ、つけまつげがわっさわっさ揺れている。
高校中退した彼女はキャバクラ、ヘルスを転々とし、二か月前にうちの店に入店した。
明るく優しい感じは三条君によく似ている。
「あー今日彼氏んとこ行かなきゃないのにぃ、稼がなきゃないのにぃ!」
「え、また今日も行くの?辞めときなって言ってるじゃんっ」
マリナの彼氏はホストをしているらしい。
毎日のように来いと言われるようで、この店で稼いだお金はその日のうちに彼氏の店に消えていく。
私は良い彼氏だとは思わなかったので、マリナに早く別れろと前から言っていた。
「だぁって別れられないんだもん・・・サナさん今日ついて来て彼氏に言ってやって下さいよぉ」
「うーん・・・わかったから!!」
「マジでッ!?絶対ですよー!?」
ガバッと起き上がり、キラキラした目で見てくる。