今夜 君をさらいにいく【完】
「そんなわけないだろう」
「本当に本当に本当・・・?」
「ああ、しつこいなお前も」
フッと笑った顔が本当に綺麗で。
「わ、私馬鹿だから信じちゃいますよ・・・!?」
「信じていいんだよ」
今度は身も心もとろけるような、そんな深いキスを何度も重ねた。
これは夢じゃないという事を確かめるかのように、私も黒崎さんを離さなかった。
「それから・・・桜井はまだ美容師になりたいと思ってるのか?」
私は腰も砕けそうなくらいなのに、黒崎さんは余裕の表情でそんな事を言う。
「え・・・?」
考えてもなかった。
美容師になるなんて、遠い夢の話だった。
「いえ・・・もう考えてません・・・」
「金銭面で無理だと思ってるのなら問題ない。もう一度専門に行け」
「え!?」
「俺が援助する。夢だったんだろ?美容師になることが」
私は即座に返事ができなかった。
確かに美容師は夢だし、やれるならばもう一度目指したい。
でも、黒崎さんにそこまで負担をかけさせたくない。