今夜 君をさらいにいく【完】
「俺に迷惑かけられないとでも思ってるんだろう?」
私の表情を読み取ったかのようにそう言う。
「は、はい・・・」
「そんなこと、お前は考えなくていい。俺がそうしたいだけだ。桜井には、夢をあきらめてほしくない」
しばらく考え込んだ後、私はゆっくりと顔を上げた。
「私・・・美容師になりたいです」
それを聞いた黒崎さんは、安心したような表情で頷いた。
「でも、ここの仕事は辞めたくないです。せめて・・・バイトとしてやっていきたいと思ってます」
「金の心配はするなと言ってるだろ?お前は勉強に集中しろ」
「いえ!家の借金は少しずつですが私が黒崎さんに返していきます!そうさせてください!」
父の借金は黒崎さんに関係ない。
せめてそのくらいは自分で返していきたい。
黒崎さんは眉間を曇らせた。
「両方掛け持つなんて大変なんだぞ!?」
「はい、だからって勉強を疎かにするとか、そういうことはしませんし、無理もしません。だからお願いします!」
私は深く頭を下げた。
見かねた黒崎さんは深くため息をつくと、
「まぁ、お前のそういう所が好きなんだけどな」
と、苦笑いを見せた。