今夜 君をさらいにいく【完】
「ひとつ、質問してもいいですか?」
私は首をかしげた。
「桜井さんは、今幸せですか?」
その問いに、私はゆっくりと頷いた。
「・・・うん」
「・・・ならいいんです」
少し、すっきりしたような表情で、私に笑顔を向ける。
「桜井さん、ずっと落ち込んでいたみたいだったけど、今すごいいい顔してますもんね。・・・そんな顏させる事ができるのは、やっぱり黒崎さんだけなんだろうなぁ」
彼は屈託のない笑顔で笑った。
「三条君、私を好きになってくれてありがとう。でも、ここで三条君と会えなかったら、私すぐに会社を辞めていたかもしれない。いつも話を聞いてくれて、私の味方でいてくれて・・・ありがとう」
私の言葉に、三条君は少し驚いて。
「何言っちゃってるんですか!?そんな最後の別れみたいな事言わないで下さいよっ」
と、いつもの明るい三条君に戻っていた。
昼休みが終わりに近づき、センターに戻ると、皆がざわついていた。
今までにない異様な雰囲気に、私も三条君も顔を見合わせた。
そして私達に気づいた人たちが、私の周りに集まってくる。