今夜 君をさらいにいく【完】
どうしよう・・・また黒崎さんに迷惑かけてしまった。
私はハラハラして、いてもたってもいられなくなり、
「違いますっ・・・付き合ってません!」
と全力で否定した。
それに対し、周りの人たちが“なんだぁー”“やっぱりね・・・”とつぶやいてるのが聞こえた。
とりあえずこの場をおさめないと。
だが次の瞬間、黒崎さんは思いもよらぬことを口にした。
「いや、桜井と付き合ってる」
再び静まり返る。皆目を丸くして驚いていた。
「だが私情を仕事に持ち込むつもりはないから。お前たちが気にすることじゃない」
信じられない。
あの黒崎さんが、付き合ってることをみんなの前で認めるなんて。
「わかったなら、いい加減仕事しろ」
そう言って自分のデスクに座った黒崎さん。
「藤本さんはっ・・・藤本さんと付き合ってるって聞いたんですがどうなんですかっ」
「この前マンションから一緒に出てきたの見た子もいるって言ってたよね・・・」
「え・・・二股!?」
皆がまた口々に騒ぎ出す。
黒崎さんが深くため息をつく。
「俺は芸能人かよ・・・」