今夜 君をさらいにいく【完】
その日の夜、私は黒崎さんのマンションにいた。
久しぶりの黒崎さんの部屋は変わらず綺麗で無駄なものはない。
「妹に連絡したのか?」
そう言ってキッチンでご飯を作ってくれている黒崎さん。
「はい!」
キッチンからは鶏肉をトマトで煮込んでいるような、美味しそうな香りがしてきた。
私はそっとキッチンの方へ向かう。
「なんだ?飯はまだだぞ」
「いえ、お手伝いしようかなって・・・」
「・・・じゃあこれ茹でてくれ」
ジャガイモを茹でていると、黒崎さんが横目で見てきた。
「な、なんですか!?」
「・・・いや、一緒に暮らしたらこういう風に毎日お前がいるのかと思うと嬉しくて、な」
そんな嬉しいことをさらりと言ってくれる。
「一緒に暮らすようになったら・・・私も料理頑張ります」
料理の事は黒崎さんや、妹の綾の方が上手いと思う。
でも、いずれは黒崎さんの奥さんになるのだから・・・しっかり覚えたい。
「今度マンション見に行こう。ここじゃ狭いからな」
そう言って私の頭を撫でた。