今夜 君をさらいにいく【完】

エレベーターの中で沈黙が続く。


「あの・・・重いですよね」


「・・・ああ」



げっ・・・そんなあっさりと・・・



「なんかいつも迷惑かけてばかりですみません」



「今に始まった事じゃないだろう」



相変わらず無表情のままの会話だが、黒崎さんの体から暖かさを感じていた。こんな機会は二度とないかもしれない。

ドキドキと高鳴る鼓動が黒崎さんに伝わってしまうのではないかと不安になりながらも、至福に浸っていた。





処置室で少し強めの薬を飲まされ、ベッドに横になった。


黒崎さんは私が横になるまで側にいてくれた。



「あの・・・書類コピーできなくてすみません、あとここまで連れて来ていただいて・・・ありがとうございました・・・」


「いや。てかお前明日病院行ってから会社に来い」


「いえ!胃くらい大丈夫です!これ以上ご迷惑は・・・」


「これは上司命令だ、行って来い」



威圧感たっぷりな言い方に“はい”としか言えなくなってしまった。


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