今夜 君をさらいにいく【完】
他愛のない話が続く。
飯田さんはIT関係の仕事をしているそうだ。30代だと言っていたが、お金は結構ありそう。ネクタイもバッグも高級ブランド品だった。
嘘か本当かわからないが彼女はいないらしい。
彼は酔ってきたのか、やたら私の事をカワイイカワイイと言ってくる。
時間が終わりに近づいてきても、一向に彼は私に触ろうとしなかった。
「失礼しますお客様、終了5分前ですが延長いかがなさいますか?」
従業員がカーテン越しに声を掛けてきた。
「え!?もう!?」
飯田さんから最初の堅苦しい表情はすっかり消えていた。
私に延長していいか聞き、ブランド物の財布から一万円を取り出した。
「60分延長で」
お金を受け取り、従業員がにこやかに去っていく。
「あの・・・大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫!サナちゃんは気にしないで」
一応客の心配はしとく。思いやりがありますよアピール。
すると私の頬に手を添え、キスをしてきた。