今夜 君をさらいにいく【完】
口元まで布団をかぶり、シュンとしていると、黒崎さんが言った。
「まぁ・・・少しは甘ったれなくなったか」
「え?」
「やる気は認める。だけど本当に体調が悪い時は無理するな。こういうのは迷惑の一つにはいんねーからな」
「・・・はい・・・」
やばい。すごく嬉しい。
顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。黒崎さんに少しでも認めてもらえた事がこんなに嬉しいなんて。更にやる気が増していく。
「しばらく寝てろ」と、私に声を掛け、処置室を出ていく黒沢さんにもう一度お礼を言うと、“わかった”というように、頷かれた。
布団にもぐりこんで、さっき起った出来事をもう一度思い出す。
部長の手を払いのけてくれた事、お姫様だっこして連れて来てくれた事、やる気は認めると、言ってくれた事。
思い出すと顔がにやけてしまう。
私は確信した。
憧れから、“恋”に気持ちが変化している事を。
黒崎さんが すき だ。