今夜 君をさらいにいく【完】
「はい・・・ご迷惑おかけしました」
「中途半端に来られると迷惑。また途中で体調なんか悪くしたら昨日みたいに黒崎さんに迷惑かかるのよ?しっかり治してから出勤してもらいたいわ」
「すみませんでした・・・」
藤本恵里香ーーー!!こいつ苦手だ。
私が頭を下げた瞬間、黒崎さんの声がした。
「なにしてる?」
「あ、黒崎さん。ちゃんと体調治ってから会社に来てもらわないと困るって事言ってたの。特に今の時期は本当に忙しいから・・・」
黒崎さんは、一度私の方を見てから、藤本さんの方に視線を戻した。
「藤本、悪いが折TEL依頼が何件か重なってる。今すぐ掛けてくれないか?」
「あ、はいっ」
藤本さんは、ちらっと私の方に目を向けてからセンターの中へ入って行った。
その後姿を見送ってから、黒崎さんが静かに話しだした。
「病院行ったのか?」
「はい!おかげさまで薬ももらえたので大丈夫です!ただの胃炎でした」
「ただのって・・・胃炎も馬鹿にできないからな、無理すんなよ」
優しい言葉に「はいっ」と元気よく応えると、黒崎さんがフッと笑った。