今夜 君をさらいにいく【完】


昨日のメールからやたら三条君はどこの店で働いてるのか聞いてくる。きっと内緒で店に突然来て脅かそうという魂胆なのだろう。



言ったら軽蔑されるんだろうな。


絶対、絶対言えない。


私は頑なに「教えない!」と言い続けた。








数日後、隣の席の伊藤さんが休憩中に話しかけてきた。


伊藤さんは40代の主婦で2人の子持ちだ。見た目ぽっちゃり系で韓ドラ好き。


“黒崎さんを見るのが仕事中の癒しだ”なんて言っている。その気持ちはすごくわかる。


だからこの前黒崎さんにお姫様だっこされた時も、“どんな感じだったのか”“どんな会話したのか”など細かく聞いてきて、一人で妄想を膨らませていたようだ。



「桜井さん、今夜の飲み会行く?」



先日、新人の子達が入ってきたのでそれの歓迎会を今夜やるらしい。


職場の人達との付き合いも大事だし、なにせ黒崎さんも来るっぽい。

私は幹事の人に聞かれた時、二つ返事で返した。



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