今夜 君をさらいにいく【完】
「行きますよー!駅前の“酒楽”ですよね?伊藤さんは??」
「もちろん行くわよ!今日は実家に子供の事頼んできたし、二次会、三次会も行く気満々だからー!」
「あはは、すごい気合い入ってますね!」
すると、伊藤さんが手で口を隠しながら小声で言った。
「黒崎課長も来るんでしょ?彼が酔っぱらった所見てみたいわよねぇ」
「今まで酔ってるとこ見た事ないんですか?」
「ないわよないわよ!ほら、完璧人間じゃない?いくら飲んでも全然酔ってないっぽいのよねぇ、まぁそこも素敵なんだけどっ」
グフフと不適な笑みを浮かべて伊藤さんはパソコンに向き直った。
黒崎さんが酔ったところかぁ。
確かに見てみたい。
この会社に入社して半年になるが、最初の歓迎会以来飲み会なんてなかったので久しぶりだ。
私はワクワクしていたので、自然とお客さんと話す声も高くなっていた。