今夜 君をさらいにいく【完】
週末ということもあって、居酒屋の店内は満席状態。
炭火焼した焼き鳥の匂いと、煙草の匂いが混じり合う。お酒が入った人達が楽しそうに騒いでいる雰囲気は、好きだ。
今日はYS課だけの飲み会なので、新人さん含め30人ほどになるらしい。
部長も参加すると聞いた時はテンションが下がったが、30人もいれば席が近くなる可能性も少ないだろう。
私は伊藤さんと早めに居酒屋に着いてしまった。
貸し切りの広い宴会場に通されると、まだ数名しか到着していなかった。
伊藤さんがやっと着いたと言わんばかりにドサっと勢いよく座る。
「三条君も来るんでしょう?」
「はい、大学で用事があるらしいので、ちょっと遅れてくるみたいなんですが・・・」
「良かったーやっぱり飲み会には花がなくちゃね!」
ふふっと笑い返し、まだ開始まで30分近くあるのでお手洗いに行くことにした。
和モダンな雰囲気のこの居酒屋は、トイレもオシャレで、手を洗う所がししどおしのようになっている。
お手洗いから出ると、偶然にも黒崎さんと出くわした。
「あ!お疲れ様です!今来られたんですか!?」
突然の出来事に、心臓がバクバクなっている。