今夜 君をさらいにいく【完】
私は三条君の肩に寄りかかっていた。
「うわっ、ごめんねぇ、私寝ちゃってたぁ!?」
酔いは醒めないが、外の空気を吸って眠気は覚めた。
慌てふためく私の言葉に、三条君が笑って言った。
「頼っていいって言ったじゃないですか。もっと甘えてくださいよ」
「そんな・・・私三条君には変なとこ見せてばっかりだね・・・」
甘えて良いなんて言われると、つい気持ちを許してしまいそうになる。
その時、突然黒崎さんが目の前に現れた。
腕を組んでこちらを見下ろしている。
「・・・桜井、酔いは醒めたか」
「は、はいっ!」
なんで黒崎さんが話しかけて・・・
思わず立ち上がると、足元がまだフラついていた。
ビール二杯に、ワインは数え切れないほど飲んだ。少し外にいたぐらいじゃ酔いなど醒めるはずがない。
黒崎さんは一つため息をつくと、隣にいた三条君に言った。
「三条、俺はこいつを送っていくから。お前は二次会に行ってこいよ」
その言葉に周りの人たちが一斉に注目する。それぞれ皆話をしていたはずなのに、黒崎さんの低い声をしっかり聞いていたのだろうか。