今夜 君をさらいにいく【完】
「え、いいっすよ!俺が送ります!」
三条君が黒崎さんの前に立ちあがった。
「いい。部下の面倒を見るのも俺の役目だ」
私は驚いて言葉が出なかった。
あの黒崎さんが私を家まで・・・なんて妄想もしたことない。
その時、伊藤さん達が三条君の腕を掴んだ。
「三条君!ここは黒崎課長におまかせして私達は二軒目行きましょっ」
「え、あ、ちょっと!!!」
三条君は抵抗しながらも、ぐいぐいと強引に連れて行かれる。
皆が私達に「お疲れ様でしたぁ~」と会釈して行ってしまった。
その場に2人だけが残された。
「じゃあ行くか。ここら辺タクシーつかまんねぇからな、そこの大通りまで歩けるか?」
「は、はいぃっ」
緊張しているのに酔っぱらっていてうまくしゃべれない。黒崎さんはそれに気付いたのか私の肩を掴んだ。
がっしりとした腕が私の体を支えている。ふわりといい香りがした。香水ではない。柔軟剤?
「あ、あのっ大丈夫ですから!」