今夜 君をさらいにいく【完】
私はテンパって黒崎さんから離れようとした。が、がっちり腕を掴まれる。
「うるせぇな。足がさっきからふらついてんだよ。いいから寄りかかれ」
強引だけど優しい。そんな大きな手に支えられながら大通りまで歩いた。
「あ、藤本さんは・・・?さっき姿が見えなかったけど・・・」
「恵里香なら途中で部長に捕まったからな。二次会に行ったと思う」
「え、大丈夫なんですか?」
やっぱり部長は美人好きって本当なんだ。藤本さんも大変だな・・・
「・・・あいつはちゃんとしてるから。大丈夫だ」
それって・・・
私はちゃんとしてないって事!?
・・・今なら藤本さんとの関係も聞けるかなって思ったけどやめといた。お酒のせいなのかここが職場じゃないからなのか、黒崎さんの雰囲気が柔らかかったから。
だから今はこの感じを壊したくない。
私達は大通りに出てタクシーを拾った。
が、私はそこで大失態をしてしまう。
タクシーの揺れにまた眠気が襲ってきてウトウトしていたら、だんだんその揺れがまだ醒めない酔いとプラスされ、気持ち悪くなってしまった。
そして
黒崎さんのスーツに思いっきり吐いた。