今夜 君をさらいにいく【完】
「お、怒ってた!?」
「えー?怒ってなかったよーめっちゃ優しい感じじゃーん!ああいう人が上司って羨ましいなぁっ」
優しい!?
初対面で優しいなんて言ったの綾が初めてかも。
・・・ってそんな事より・・・
こんなに迷惑かけてしまうなんて・・・
もう顔合わせらんないよ・・・てかクビ!?
いやいやそれはないと思うけど、きっと会社に行ったらすっごい怒られるんだろうな・・・
私は朝ごはんを食べられる気分でもなかったので、胃薬だけ飲んで会社に出勤した。
黒崎さんのデスクを見るとまだ来ていないようで、少しほっとした。
気を落としたまま席に着くと、にんまり顔の伊藤さんが話しかけてきた。
「昨日すごかったわねっ」
どの意味ですごいのかはわからない。私が酔い潰れた事なのか三条君と黒崎さんが火花散らした事なのかそれとも・・・
私が、「え?」と聞き返すと、
「桜井さんが酔い潰れた時、外まで運んだの課長なのよ」
「・・・え?」
「覚えてないでしょ?桜井さんを軽々と持ち上げてねぇ、まさに王子!!もう惚れ惚れしちゃう」
外に運んだ?・・・私はてっきり三条君が運んでくれたのかと思っていた。まさか黒崎さんだったなんて。