今夜 君をさらいにいく【完】
「あたしあなたと課長の事応援するわよ!だから昨日三条君を二次会に誘ったんだからね!?」
興奮して私の肩を掴んでくる伊藤さん。
「え!!」
「気付いてないとでも思ったー?だてに長く生きてないわよ。桜井さん、課長の事好きでしょ!?課長を見る目が違うもの」
得意げに話す伊藤さんに、返す言葉も見つからない。
周りにバレてるのかと思うと恥ずかしくなってくる。
その時、黒崎さんがセンターに入ってくるのが見えた。
もちろんスーツは昨日とは違うものだった。冷や汗が急に出てくる。
私は立ち上がって黒崎さんの方へ向かった。
「あのぅ・・・」
消えそうな声で黒崎さんに話しかけると、何事もなかったような言葉を返された。
「どうした?」
それはいつもの黒崎さんとなんら変わりはなかった。
「昨日は申し訳ありませんでした!・・・本当に最低な事してしまって・・・」
「ああ・・・具合は大丈夫なのか?」
「はいおかげさまで・・・それよりスーツだめにしてしまって・・・新しいの買わせてもらいますっ」