今夜 君をさらいにいく【完】
「そういえば安奈さんは他にも仕事されてるんですか?」
「はい・・・なんか夜のお仕事みたいで・・・詳しくはわからないんですけどね、両親の借金と私達の生活を支えるにはそうするしかないみたいで・・・なので姉が今日みたいにご迷惑かけることも多いと思いますが大目に見てあげてくださいっきっと相当疲れてるんだと思います・・・」
妹の必死に頼みこむ姿に俺は笑顔で頷いた。
「そうだったんですね。理由がわかって良かったです。安奈さんの事はまかせてください。・・・それと、安奈さんはあなたがいてくれてとても心強かったと思いますよ。きっと一人じゃ立ち直れなかったのかもしれない。あなたの存在は大きいと思います。だから罪悪感を感じる事はないですよ」
その言葉に、妹は少し照れくさそうに笑った。
桜井が夜の仕事をしているのは知らなかった。スナックかそれともクラブか。
親の借金はどの程度あるのだろうか。
仕事中ぼーっとしてしまうのも、無理に笑顔を作っているような気がしたのも、こんなワケを背負っていたからなんて誰が想像できたであろうか。
予想外だった。
でもそれならそれで、最初に俺に言ってくれればいいものを。
そんなに会社を、俺を、信用できないのか?
心の中にモヤモヤとしたものがこみ上げてきた。