今夜 君をさらいにいく【完】



翌日の仕事中も、頭の中は飯田さんでいっぱいだった。





「さーくらいさん!」



気付くと目の前に三条君がいた。



「わっ・・・三条君急にどうしたの!?」



「いやいや、俺ずっと隣にいたんだけどなぁ。桜井さん眉間にしわ寄せて・・・すごい深刻そうな顔してましたけど何かあったんですか?」




三条君が隣にいた事にも気付かなかったなんて・・・私どんだけ考え込んでいたんだろう。




「うん、大丈夫!てか三条君も今休憩?」


「そうなんですよ!今日休憩かぶってますよね!ラッキー」



休憩室は5階と10階、15階にある。

私達はいつも一番近い10階の休憩室を使っている。



「三条君、飲み物なんか奢るよ、何がいい?」



「え!いいっすよそんな!俺が奢ります!」



「いいのいいの!」



自販機の前で、お互いお金の出し合いっこをしていると、後ろから黒崎さんの声がした。



「仲がいいな」



とっさに振りかえると、片手にコーヒーを持った黒崎さんが真後ろに立っていた。


心臓が飛び跳ねる。


< 81 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop