今夜 君をさらいにいく【完】
翌日の仕事中も、頭の中は飯田さんでいっぱいだった。
「さーくらいさん!」
気付くと目の前に三条君がいた。
「わっ・・・三条君急にどうしたの!?」
「いやいや、俺ずっと隣にいたんだけどなぁ。桜井さん眉間にしわ寄せて・・・すごい深刻そうな顔してましたけど何かあったんですか?」
三条君が隣にいた事にも気付かなかったなんて・・・私どんだけ考え込んでいたんだろう。
「うん、大丈夫!てか三条君も今休憩?」
「そうなんですよ!今日休憩かぶってますよね!ラッキー」
休憩室は5階と10階、15階にある。
私達はいつも一番近い10階の休憩室を使っている。
「三条君、飲み物なんか奢るよ、何がいい?」
「え!いいっすよそんな!俺が奢ります!」
「いいのいいの!」
自販機の前で、お互いお金の出し合いっこをしていると、後ろから黒崎さんの声がした。
「仲がいいな」
とっさに振りかえると、片手にコーヒーを持った黒崎さんが真後ろに立っていた。
心臓が飛び跳ねる。