今夜 君をさらいにいく【完】
「おつかれーっす・・・」
三条君が小声でつぶやいた。この間の居酒屋での事が頭をよぎる。
「桜井、三条。お前らこんなとこでガキみたいなやり取りしてんなよ、見苦しい」
不快感をあらわにした表情で、ため息混じりに私達に言った。
三条君を見ると黒崎さんを・・・睨んでる!!!
どうして黒崎さんは、また三条君を怒らせるような事を言うんだろうか。この前から黒崎さんらしくない言動が、気にかかった。
「あ!っと・・・黒崎さんも今休憩ですかぁ~。ぁあ、そのコーヒー!おいしいですよね!」
わざとらしい感じだったかもしれないが、この嫌~な空気を、一刻も早く追い払いたかった。
「ああ・・・」
ええ!?それだけ・・・!?
黒崎さんは私達の前を横切り、去って行った・・・と思ったら、立ち止まり振り返った。
「お前ら今から休憩か?」
「はいっそうですけど・・・」
「・・・悪いが桜井、これを営業課の安達に渡して来てくれないか、急ぎなんだ。休憩はその後とっていいから」
「あ・・・はい・・・」
脇に抱えていた茶色い封筒を私に渡すと、黒崎さんはスタスタと休憩室を出て行ってしまった。