今夜 君をさらいにいく【完】
「・・・なんすかアレ。そんなん他の奴に頼めばいーのに。わざわざ今から休憩に入る桜井さんに頼まなくたって!」
横で三条君が顔をしかめている。
「しょうがないよ、急いでるみたいだし・・・行って来るね!三条君、またあとでね」
苦笑いの三条君に別れを告げ、足早に休憩室を後にした。
営業課は4階にある。
エレベーターの前で待っていると、中島部長が近づいてきて私の隣で立ち止まった。
「お・・・お疲れ様です・・・」
顔がバレないように下を向いたままで挨拶をすると、部長も「お疲れ」と返してきた。
それと同時にエレベーターが開かれ、二人とも乗り込んだ。
こんなことなら遠くても階段で行けばよかった・・・なんて思いながら、私は4のボタンを連打した。
「何階ですか・・・?」
「ああ、私も4階だ」
よりによって同じ階で降りるなんてツイテない。
その時、部長が私の顔をしげしげと見つめてきた。心臓が飛び上がる。
「君・・・桜井さんだっけ?・・・オペレーターの子だよね?」
「は、はい・・・」
な、なんなの!?
茶封筒を掴んでいる手が汗ばむ。