七夕の星達(完)
「…二人は、四年前に…亡くなったのよ…」
込み上げてくる“なにか”を堪えるかのように、夕奈は自分の下唇を噛んだ。
「赤ん坊の頃に、車に轢かれてっ…」
「わかってるわ!!近くの草原の前で轢かれた!!でも、その草原にいたのよ!!」
七実の目には、薄らと水の膜が張っていた。
目を見開いた夕奈の前で、どうしようもないその感情を、吐き出すかのように。
「い、たのよ…ほんとに…いたのっ!!」
「…そうね、見間違いなんかじゃ…ないわね…」
言いながらしゃがみこんだ夕奈は、七実の肩を抱いた。
そんな夕奈の目にも、薄く膜が張っていた。
必死の訴えに、七実の言葉を信じたようだ。
「な、なかっ…ゆうたく…うぅ…」
夜が明けてすぐの朝、二人の女性の嗚咽が、辺りに小さく響いた。