溺愛カンケイ!

足取り重く会社を出た。

はぁ、こんなの初めて。
拓也さん今日はニコリともしてくれなかった。

拓也さんの笑顔が見れないのは辛いな…。
ホント涙腺が緩くて仕方ない。
ゴシゴシと目元を拭い歩き出すと

「花音ちゃん、今帰り?」

田中主任が駆け寄ってきた。
確か主任は拓也さんと外回りだったはず…。

「あ、はい」

泣いたのを悟られたくなくて俯き気味に答えると

「ねぇ、目が赤いけど…もしかして泣いた?」

顔を覗き込まれた。

「あっ、これは…何でもないです」

「でも…『田中、何やってる。行くぞ」

課長が田中主任を呼んだ。


「課長、ちょっと待って下さいよ」

会社へ戻る拓也さんの後ろ姿…。
ズキリと胸が痛む。


「田中主任、行ってください。私帰るので。お疲れさまでした」

ペコッとお辞儀してそこから逃げるように足を動かした。


「あっ、花音ちゃん待って…」

田中主任の声も聞こえない振りをした。

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