溺愛カンケイ!
「イタタ…」
地味に痛くて顔をしかめた。
この年になって椅子から落ちるなんて恥ずかし過ぎるよ。
「ごめんっ、花音ちゃん。そんなに驚くとは思わなくて…大丈夫?」
田中主任は眉をハの字にさせ申し訳なさそうに言うとグイッと腕を掴みそのまま起こしてくれ、引っ張られた勢いで主任の胸に飛び込む形に。
目の前には田中主任の意外に逞しい胸板。
鼻を掠めるスパイシーな香りに慌てて主任から離れた。
「あのっ、すみません」
「いや、俺が驚かせてしまったから…ごめんね。怪我してない?」
「だ、大丈夫です」
ホントはお尻がジンジンして痛いけど。
「そっか…よかった」
田中主任はホッとしたように息を吐くと
「花音ちゃん、もう仕事は終わる?」
その言葉に時計を見ると定時を過ぎている。
「あ…これを打ち込んでプリントアウトしたら終わりますけど」
「そっか、じゃあ終わったら声かけてね。俺も仕事残ってるから」
またあとでね、と倒れた椅子を直してくれて席に戻っていった。