溺愛カンケイ!
「話は済んだんならもう用はないだろ。早く戻れ。それと二度と花音に近付くなよ」
拓也さんは有無を言わせない迫力でキッパリと言い放った。
「…は、い」
坂口は小さい声で返事をし逃げるように座敷に戻って行った。
私は目の前の出来事をまるで夢でも見ているかのようにじっと眺めていた。
「花音…」
拓也さんが優しく呼び、その声にハッと現実に引き戻されたかのように我に返った。
そこで初めてちゃんと拓也さんを見ると髪は乱れネクタイは緩められて額には汗が浮かんでいる。
拓也さんは私の隣の椅子にドカリと座り、前髪をかきあげホッと息を吐き
「花音…大丈夫か?」
心配そうな表情で私の頬に触れ、そっと涙の跡を手で撫でる。
何でここにいるんだろうとか疑問に思う事はあったけど、拓也さんが目の前にいるという事が素直に嬉しかった。
今まで押さえていた気持ちがプツリと切れ座ったまま拓也さんに抱きつくと、安心する香りが私の鼻を擽る。