君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
トントンッ…





「失礼します。」







「あ…琴音チャン…蓮くん…。」






708号室には海生さんの姿しか無く、ベットは空っぽだった。







「あの…あたし決めました。海生さんと同じであたしも空斗に薬を使ってもらいたい。記憶が無くなったとしても、側で空斗が笑っていてくれれば、あたしはそれだけで幸せですから。」







「俺も同意見です。」







海生さんは、にこっと微笑み返し、







「ありがとう。考えてくれて…本当にあなた達には感謝でいっぱいで…もう、どれだけお礼をしたらいいか…」







涙を流した海生さんは、ぺこぺこと頭をさげた。








「そんなッ止めてください!それにまだまだ希望があるのですから、涙は早いですよ?空斗は絶対に元気になる、あたしはそう信じています。」







海生さんは「なんていい子なのかしら」といい、あたしをふわっと抱き寄せた。






空斗と同じ香りがして心地いい。






それに、“お母さん”に抱きしめられるのは初めてだったので少し緊張したけど、それは一瞬で。






“お母さん”のぬくもりは温かくて幸せだった。
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